人生の夏休み 〜ロンドン駐夫の記録〜

「どうも、キャリアウーマンです」なワイフにライフを激しくコントロールされまくる、日々をまったり過ごしたいアラフォー終わりたての中年男子です。 職場の理解も快く得られ、晴れて休職。子供(姉・弟)と共に、妻の転勤、駐在に帯同する形で地球の裏側まで引っぱられ、ただ今初めての駐夫・専業主夫を経験中。 ほぼ同内容のInstagram【ID : @pondotaro】をこちらで清書。渡英前の事なども順不同でつぶやきます。

IgA血管炎・イギリス闘病記⑥ ストレスマックスの日

2月20日(土):
発症11日目入院4日目

昨日は何度か看護師や医師が来たものの、結局検査以外の医療行為は一切完遂されることなく一日放置された状況であった。
医師の回診は午前中に一度。
コロナ対応で医師が少ないらしく、午後にずれ込むことも多々。
そして、困ったことに毎日違う小児科と外科の医師がそれぞれやって来る。
もちろん綿密な連携や引継ぎもなどされておらず、何が起きたのかについて毎日同じ質問を繰り返してくるので、都度最初から説明しなくてはいけない。
こういった情報共有のレベルについては、我々夫婦の場合は

 日本のレベルが異常に高い

と思っている。
世界的に見てマイノリティーは日本であり、これが世界標準なのだ。

 海外でも日本同等のサービスレベルを享受できると思い込んで
 それに甘んじているとロクなことにならない

と思っているし、実際ロクなことにならなかった経験が公私共に何度もあったりする。
この点をしっかり念頭に置いた上で、想定できる展開に対し、可能な限り準備した上で物事に臨まないと、結局自分が痛い目に遭うだけなのだ。

実際に、A&EやGPで何度も同じ説明をさせられたという経緯もあり、妻が、

 息子が発症した日からの症状を時系列で纏めた資料

を作成してくれていたので、毎日のように同じことを聞いてくる病院のスタッフたちにはその紙を見せて説明していた。

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単純な方法ではあるけども、この紙のおかげで説明する側・される側共に非常に効率的に話を進めることができた。
毎回記憶をたどって答える必要もなかったし、記憶違いによる誤回答も無かったし、医師からの評判もすこぶる良かった(中にはコピーを取った医師もいた)。

そしてこの日もまた、新しい医師が来て同じことを聞いてきたので、紙を見せてこれまでの病状や治療を説明。
で、昨日は結局何もしてもらえていないので、何かしらの医療処置をすぐにやってほしいと依頼。

息子の症状(嘔吐、腹痛が続いている)から、またも腹部エコー、そして点滴、検尿、検便、血液検査。さらに嘔吐の負担を減らすために、鼻からチューブを入れて定期的に胃の中のものを吸引するということになった。

・・・で、この鼻チューブが大変だった。。。超大変だった。。。
この入院生活の中で瞬間最大風速を叩きだしたのはこの鼻チューブ。
思い出したくもないほど大変だった、、、書きたくないほど大変だった、、、と、予めこのくらいハードル上げとかないと描写が生々しくてドン引きされる気もするので、あえてここでハードル上げ。

息子の嘔吐の色は緑濁色だったのだが、これは腸の動きが悪いことが原因。
飲食したものが体の中で順方向に進まない時にこういった色になる。
この状態だと何も食べていなくても、胃に胆汁などが溜まり、ある程度溜まったら再び嘔吐してしまう。
腸の動きが回復して巡りが良くなってくると、胃液の色もクリアになってくる。
それまでは嘔吐を繰り返すことが予想されるので、体力の消耗を防ぐためにも鼻から胃にチューブを入れて、定期的に吸引する必要がある。

・・・と言うのが医師の鼻チューブに関する説明。
特に反対する理由などないので挿管となったのだが、チューブを入れられた瞬間、息子が初めての感覚に超パニックに・・・。
激しく騒ぎ暴れ、

「死んじゃう!死んじゃうよ!!」

と叫ぶ息子。

「大丈夫!大丈夫だよ!」

と焦って声をかけるも聞き入れられるような状態ではない息子。
そして

「指が動かない!!指が動かない!!!」

と叫ぶ息子の手足を見ると、指がこわばって変な形で固まってしまっていた。
それを目の当たりにした私も超焦った。
このままだと本当にショックで死んでしまうと思ったので挿管を止めてもらえるよう狼狽しながら頼んだのだが、看護婦たちにとっては珍しい光景ではなかったようで、

「パニックになっているので、なにか気を引くものを見せてあげてください!」

と逆に指示が飛び、いそいでスマホポケモンの画面などを見せた。
これが効いたとは到底思えないが、少しして息子の手足のこわばりは解けた。

それでも、やはり鼻チューブによる喉の痛みや違和感が耐えられないようで、泣きながら訴え続ける息子。
この違和感に慣れてくれるまで待つしかないのだが、見ているこちらも拷問のような時間であった。

そして続けざまに腹部エコー検査。
病気から来る苦痛と、治療から来る苦痛を与え続けられ、息子のストレスも相当なものになっていた。
息子が泣いて訴えるたびに励ましの言葉をかけていたのだが、腹部エコーへの移動中に息子が

「パパ僕を殺そうとしてる!!」

と叫んだ。

・・・こんなことを叫んでしまうほど苦しんでいる我が子を見ていてなんとも形容し難い辛い気持ちになった。。。が、それでも励まし続ける以外できることがない。手を握ったり背中をさすったりしているうちにチューブの違和感に慣れてきたようで、なんとかスマホでゲームをするくらいに落ち着いてくれた。

今回の腹部エコーを担当してくれた医師は、室内にあるテレビで子供向けの映像を流してくれた。
息子もそれでだいぶ気が紛れたようであった。
こんなのあるなら最初っから流してほしかったが、こういう気の回らない人たちが多いのも海外あるあるだ。

病室に戻り、少し目を離したすきに息子が自分で鼻チューブを抜いてしまうアクシデント発生。
チューブがなぜ必要なのかを言い聞かせ、当然ながらもう一度挿管することに。
さっきのパニックがあったので見ている私も不安でたまらなかったが、2回目ということもあり息子も心の整理がついていたようで難なく完了。
ほっと胸をなでおろす。

コロナの影響で、付き添えるのが私だけだったのだが、これは返って良かったのではないかとも思った。
母親である妻がこういったシーンを目の当たりにしたら、きっと妻は私よりもはるかに消耗していたと思うし、
父親である私がこれを目の当たりにしていなかったら、きっと現実味を持って息子の病状を受け止めることができず、もっと浅はかな対応をしていただろうと思う。

付き添っているのは私だが、やはり妻の方が色々と気が回るし英語も上手い。
私だけが医師と会話していると、治療において何らかの不利益を被りかねないと思い、この日から医師との会話の際はスピーカーホンで妻にも参加してもらうようにした。

頭では治る病気だと分かっていても、息子が苦しみ衰弱していく姿を目の当たりにしていると、やはり心もとても辛い。
心が張り裂けそうってのはこんな状況のことを言うんだろうな、と思った。

母親よりも父親の愛情は浅いと思っているのだけど、、、そんな私でもこの数日で大分情緒不安定になってきた。
ちょっとした刺激ですぐ泣くおっさんと化してしまっていた。

振り返ってみると、この日が過酷度のピークであったと思う。

 

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