魔法の言葉
ティンプトンウォースーズーペンレン!
文字にするとハリポタの呪文っぽいが、そうではない。
そうではないのだが、私にとっては幾度となくピンチを救ってくれた魔法の言葉だ。
一昨日、ある人達の表情を見て、ちょっとこの言葉を思い出した。
発端は、奥様がつい最近アマゾンでミシンを購入したことである。
以来、奥様は布マスク作りにハマってしまったようで、近所の生地屋で布やゴム紐といった材料をちょいちょい調達するようになった。
そんな中、間もなく2度目のロックダウン(11月5日から12月2日までの4週間)となることがボリジョンの口から明らかになり、この生地屋もその間営業停止となる。
材料が無くなりそうだったこともあり、買い物がてら子供らの下校時間に合わせて生地屋を訪れることにした。
店に着いてみると、やはり同じ事を考える方々はいるもんで、いつになく盛況。
入店可能な人数は決まっているので、店の前には7、8名の列ができていた。
こんな時期にわざわざ家族4人でぞろぞろ連れ立って入る必要もあるまいということで、私は息子を連れて一旦離脱。
生地屋から50mくらい離れたところに、ポケGOのジムがあったので、そこを討伐して時間を潰すことにした。
ポケモンジムがあったのは、電話ボックスを使ったアート的なものが設置されている場所で、ちょっとした撮影スポットになっている。
そこの脇で、息子と二人でスマホをバシバシとタップしまくっていた。
暫くして、通りがかったカップルが写真を撮り始めた。
別に珍しい光景ではない。
我々は気にも留めずスマホをバシバシタップ。
撮影を終えたカップルに、どこぞの社員証をぶら下げた青年二人組が近寄って何やら話しかけていた。
でも別にそんなの関係ないので引き続きスマホバシバシタップ。
ジムを守るポケモンが全てCP3000超えというツワモノぞろいでなかなか倒せない。
青年二人組がスマホで動画撮影を始め、カップルの女の子が何やらそのスマホに向ってしゃべり始めた。
何かの撮影だろうか?
再ロックダウンについてうんたらかんたら言ってるのだろうか?
この青年二人組は地域のラジオ局のクルーで、街角インタビューでもしているのだろうか?
・・・などと思いながら、ジムのポケモンを討伐すべくスマホをバシバシタップタップタップ!!
でもなんか変!!全然倒せない!!なんで?!?
女の子が1分ほど喋って撮影は終了。
そして青年二人組とカップルの間で、ご協力ありがとうございます、いえいえどういたしまして的な会話が交わされていた。
でもやはりそんな事はどうでもいい。
そんな事よりも目の前のジムのポケモンが全く倒せない。なぜだ?どうなってるんだこれは?
・・・どうやらポケモンの持ち主が倒されまいと抵抗しているようだ。
間違いなく私らが攻撃したそばから回復アイテムをポケモンに与えている。
CP3000超の強力ポケモンが6匹もいるので、回復されてしまうとキビシイ!
ドラクエ2のシドーがベホマ使うくらい厳しい!!根比べか!?
と思いながらスマホバシバシタップしていたら、不意に、、、
「*jv@cbnlg??」
と話しかけられた。
声の方にスマホから目を移すとそこには先ほどの青年二人組。。。
私は瞬時に悟った。
・・・・・!??
え!?何?
君たち俺にあの女の子と同じことやらそうとしてる?!
1分間のいきなりアドリブ英語スピーチやらせようとしてる!??
ありえないでしょ!?ありえないよ!日本語でも無理だよ!
突然のピンチ襲来に、
「I 'm not good at speaking English, sorry!!」
と素早く力強く返答。
ピカチュウの「でんこうせっか」より速かった。
青年二人組は
「Oh~」
と、納得と落胆が交じった表情を残して去っていった。
この表情を見て私は思った。
「今のは、、、どこかで見たことのある表情だ」
と。そう、見たことがある、、、そういう表情見たことあるよ!
はるか昔、幾度となく見たことがある!
父の仕事の都合で少年時代を台湾で過ごしていたのだが、そこでも時々ではあるが不意に
「+RGヴぉあM+rboedrえrsfv?」
と話しかけられることがあった。
おそらく私に道を聞いていたのだと思うが、当然私は相手が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
そんな時、私は決まって
「ティンプトン ウォースー ズーペンレン!(わかりません、僕日本人です!)」
という魔法の言葉を連発していた。それを言うと私に話しかけた方々は、
「オオ~」
という言葉と共に去っていったものだが、、、思い出したよ!
その時の人たちと同じだよ!この青年二人組の表情!!
・・・でもそんなことはどうでもいい。
無事ピンチが去ったことに安堵し、再びロンドンの片隅でポケGOにいそしむ私なのであった。
※結局、回復アイテムを与え続ける主に根負けしてポケモンジムは倒せませんでした。
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